法学の勉強の全体感(初心者向け)

2020年5月14日

今回は、法学初心者の方に向けた内容です。
勉強を初めて、1年以内の方に読んでもらえたらなあと思って書いてます。

ざっとでいいので、テキストを通読しましょう!

法学の勉強ですが、初心者にとっては、かなりつらいです。
何がつらいかというと、全体のイメージがつかめない限り、勉強しているトピックの意味が理解できないからなんです。

すごく簡単に説明すると、算数の勉強をするとき
足し算の勉強をする際には、足し算の理解さえできれば、それで足し算の項目は完璧に習得出来ます。
この際に、引き算の理解がなければ、足し算の理解が出来ないということはないと思います。
つまり、多くの学問においては、
Aのトピックを習得する際には、Aのトピックで簡潔することが普通です。
これまでの知識を前提とすることはあれど、これから勉強する知識を前提とすることはありません。

これに対して、法学の勉強というのは、各トピックで学ぶことは、これから習得する知識がないと、しっかり理解できないのです。
例えば、民法を例にすると
かなーり最初に、「権利の濫用」というものを勉強されるかと思います。
多分、テキストの最初の10ページとかに記載があると思います。
民法1条2項に「権利の濫用は、これを許さない。」とあります。
でも、そもそも、権利の内容を学んでいないのに、どういう場合が濫用なのかって言われても…というのが普通だと思います。
必ず勉強する宇奈月温泉事件の判例では、所有権に基づく温泉配管の収去が認められなかったとありますが、
土地上に不法占有物があるときは、土地の所有権に基づく収去明渡請求が認められる
という極めて当然の原則を理解していなければ、この判例の修正の偉大さは理解できないでしょう。

このように、1回の勉強で、各トピックをマスターするということは不可能です。
だから、とにかく初心者の方は、あんまり理解できなくてもいいので、テキストを1週、通読するところから始めましょう。
この段階で、各トピックをしっかり理解しようとするのはナンセンスですし、時間の無駄です。

但し、大学の単位を取るためにだけ勉強するのであれば、試験に出るところだけ勉強すればいいと思います。
が、司法試験レベルの勉強となると、大学の1年目の前期で習う内容を深く理解しないといけないので、その内容だけ勉強していても伸びしろはないよという話です。

「原則」という言葉にだまされないように!

法学の勉強を始めた方の中で、数学が得意だったから始めた方って多いんじゃないでしょうか。
私は、高校の時に、数学が得意だったんですが、弁護士の先生に、「法学は数学に似ているから、君は、法学が得意かもよ。」と言われて、そーなんだーと思って、勉強を始めました。

はっきり言います。全然似てないです。
この数学と法学の類似性を説く人たちは、誤解を招いているので、撲滅されるべきとさえ思ってます。
なので、法学の勉強をする際に、数学と同じように勉強することは絶対にやめてください。

私は離れて久しいですが、数学の世界では、原則は絶対ですよね。
(X+Y)^2 = X^2 +2XY +Y^2
は、どんなことがあっても、絶対に崩れない訳です。
(X+Y)^2 = X^3 +2XY +Y^3
になることはあり得ません。
そのため、原則をとにもかくにも暗記して、その原則をどう適用、応用するかが数学の勉強だと思います(専門的になると違うのかもしれませんが、高校生の数学はこうでした。)

他方、法学の勉強ですが、●●の原則と言っても、その原則は、例外を伴うものなんです。
度々、権利の濫用の話をしますが、
土地の上に不法占有物があるときは、土地の所有権に基づく収去明渡請求が認められる
という極めて当然の原則すら、例外があるのです。

この原則が、絶対的なものであるか、否かという違いに気づくのに、マジで1年かかりました。
数学的に考えていると
択一で
「土地の上に不法占有物があるときは、必ず、土地の所有権に基づく収去明渡請求が認められる」
という肢は○しちゃうんです。

なので、初心者のうちは、原則は、基本的な方針くらいにとらえるべきなんです。

しかも、初心者のうちから、原則を徹底的に理解する必要もありません。

結論

長くなったけど、初心者が法学の勉強をするのであれば、肩肘張らず、ざーっと読むくらいでOKです。
一つ一つの精度を高める暇があれば、ざっとでいいので、全体の把握をすることの方がよっぽど大切です。
おそらく、初心者の方は、よくわかんないなーと思いながら勉強すると思いますが、普通です。
よくわかんないままでいいので、ざっと読み進めましょう。

蛇足

司法試験を目指すのであれば、必ず予備校に行きましょう。
大学の授業だけを受けていれば受かるということはあり得ません。

上で書いたとおり、とにもかくにも、法学という学問は全体を理解しないと個々のトピックを理解出来ない学問なんです。
例えば民法は、大学1年前期「総則」、後期で「物権変動」とかって進むと思いますが、
債権総則の理解がない人が、大学の先生の高尚な「総則」の授業を聞いたところで、10%も理解できないんじゃないでしょうか。

結局のところ、予備校に行って、スピーディーにとりあえず1周学ぶというものをしないと何も始まらないと思って大丈夫です。

私は、大学1年の成績はかなり悪かったんじゃないかな。予備校言ってるよとは口外しにくいくらい悪かったですね。
でも、予備校でとりあえず基礎講座が終わったあとの2年目とかは、基本3法はAしか取った記憶がないです。
人より勉強しているんだから当たり前なんですが、何が言いたいかというと、とりあえず1周が終わるまでの成績とか無意味だからっていう話です。
その時期の出来なんて、法学の学力的にも無意味ですし、大学1年の成績なんて就活にも無意味ですし、何にも気にする必要ないよっていう応援を込めて、
勉強を始めた方は、淡々ととりあえず1周回しましょう。